昨夜同室だったブラジル人が朝旅立って行った。
彼はマーケティングの仕事をしているエリートで、ビールを飲みながら両国の政治経済について語り明かした。
彼はとても礼儀正しく、知識も豊富でとても為になった。
握手をしてお互いの旅の幸運を祈る。
一人になると、僕は次に向かう決心をした。
そのままチェックアウトしてヴェネチア中央駅に向かった。
さてどこに向かおうか。
ベンチに座って思案する。
なにより早く北に向かわなければ。
イタリアの北にはミラノを通過してドイツが開けている。
その中間にスイスがあった。
永世中立国スイスのチューリッヒ。
僕はその響きに惹かれた。
そうだスイスに向かおう。
僕は早速チケットを取りに行った。
しかし夜行列車の乗車券は取れたものの、寝台のベットの予約が取れなかった。
陽気な係員が、後は車掌に直接聞いてみてよと言う。
まあ良いか。
実際列車に乗り込んでから考えよう。
目的地が決まると身が軽くなった。
出発の夜11時まで時間はたっぷりある。
さあ、憧れのヴェニスを歩こうじゃないか。
やはりヴェニスの街は美しかった。
まるで水面に浮いている様だった。
細い運河にゴンドラや水上タクシーが行き交っている。
僕はとても幸福な一時を過ごすことが出来た。
しかし観光地のため物価がとても高い。
残念ながら僕の所持金では食堂に入ることはできない。
なんとかスーパーを見つけ、パンとウインナーを買った。
運河のほとりに座って取るささやかな食事は素晴らしかった。
ゴンドラに乗った観光客が不思議そうに僕を眺める。
僕は充実した笑顔を返す。
僕は今とても充たされているんだ。
夜行列車まであと4時間。
ヴェニスをゆっくり感じよう。