目覚めるとお昼を過ぎていた。
おそらく体調は最悪だろうと思っていたが、意外と調子良かった。
いままでの経験では、必ず熱が出ると思っていた。
しばらく信じられなかった。
踊り、表現し、自分を放出することは身体に良いのかも知れない。
そしてそれが僕には足りなかったのかも知れない。
夜7時20分の夜行列車まではまだ時間がある。
でもやっぱりゆっくりすることにした。
旅先ではつい無理をしてしまう。
今日はいろいろ頭を整理しようと思った。
バルセロナの街は混沌としていた。
いろいろな国や人種や階級の人々が街を行き交う。
だれもがお互いが何だか分からない。
アイデンティティーを守るのは自分自身しかいない。
時々それを守るために戦わなくてはならない。
夜中のパーティーがそれを象徴していた。
フロアーに密集する人はもうだれが何だかわからない。
ただ音を共有して踊るだけだ。
あらゆるところで誰かが揉めている。
言語が違うと掴み合うしかない。
するとつかさず警官が入ってくる。
近くでは貧しい人が花を売り歩いている。
しかし人々はそれでも集まる必要があるのだ。
何かを共有する必要があるのだ。
バルセロナに来て、正直自分自身を失いかけていた。
「アイデンティティー・クライシス」
自分が何であるのかとても不安になる時があった。
この街で自分のパスポートが果たして何の意味を持つのか。
僕はいったいここでは何なのか。
バルセロナが夜の騒乱に向けて動き出してきた。
夜行列車が僕をここから引き離してくれるだろう。