今回は、日曜日の過ごし方について。一週間以内の短期間滞在の方は、日曜日は迷わず
パリ郊外(定番はイル・ド・フランスかクリニャンクールの蚤の市)に出るか、超メジャ
ー市内観光(凱旋門、エッフェル塔など)に行かれることをお薦めします。商店は大小を
問わず軒並みお休みで、街中は閑散としています。
では、中長期滞在の場合には? 天気が良ければ街中をふらふら散歩しつつ公園や広場に立ち寄るといいでしょう。
ちなみに、AVRONのアパート滞在中の日曜日(6月18日)は、「今日行かなければこの先二度と行
かないような気がする近所のペール・ラシェーズ墓地」まで散歩しつつ、現在パリジャン
の間ではやっているという噂のOBERKAMPF周辺を散策してみることにしました。
まずはアパートからまっすぐ北上してペール・ラシェーズ墓地に到着。途中アフリカ料理の店を何軒かみつけます。フランスの墓地は緑も多く、墓石も多彩な形をしている為、あまり裏寂しい感じはしません。墓地の中に入ると著名人のお墓一覧の掲示板がありまし
た。「哲学者めぐりするぞー! よし、メルロ・ポンティからだ」と意気込むも、オスカー・ワイルドの名前を発見してあっさり目的地を変更。「ワイルドなんだから、当然お墓も耽美に違いない」と勝手に推測し歩き始めました。しかし。自分でいうのもなんですが、私はものすごい方向音痴。自分の大学の構内で迷子になったこともあるし、ある雨の日、景色がかわってしまったような気がして、自宅の近くで道が解らなくなったこともあるくらいです。墓地のように道がうねうねと続き、どこまでいっても墓石ばかりの風景の中、道を失わないはずがありません。3回ほど曲がったあたりで、早くも自分の現在位置を把
握できなくなってしまいました。当然地図も持っていません。
「とにかくまっすぐ進むのよ!」と、自分を励ましつつまっすぐ進もうとするのですが、道はどんどん曲がっていきます。恐慌状態に陥り周囲を見回すと、カップルや家族連れや旅行客の集団が楽しそうに談笑しながらお散歩しています。この迷宮のような場所で、どうしてこの人たちはこんなに楽しそうにしていられるの? と憤りにも似た疑問が浮かびますが、とにかく他の人たちは余裕たっぷりに歩いているのです。「やはり病は気からだわね」などとよく判らないことを呟きながら、他の人々を真似て、気だけはしっかりと保っているふりをしつつ歩きつづけます。笑顔を浮かべて行き違う人と「Bonjour」などと挨拶をしてみたりもします。
ところがそんな私の様子を見て何を勘違いしたか、観光客がつぎつぎと私に道を尋ねてくるのです。だがしかし。「ショパンのお墓はどこですか?(英語)」などと聞かれても、判るはずがありません。しかも彼らはご立派な地図を持っているというのに! そうか、地図を持っていてもここでは迷うのね。だから私が迷うのも当然だわ。などと、全然関係のない方向に思考は飛んでいき、かすれたような声で「ア、アイ キャント スピーク イングリッシュ…」とつれなく答え、更に歩を進めますが、道はなおも分岐していきます。
進めば進むほど方向感覚がなくなり、「もうこのまま二度とここからでられないのかもしれない。おなかがすいたらどうしよう……」と途方に暮れ始めます。「とにかく人が一杯いる方向に進まなきゃ。独りきりになったら、おしまいだわ」とか、「平面上を進んでいるわけなんだから、同一方向に直進すれば、いつか必ず壁に突き当たるはず」とか、論理的に思考すべく努力してみるのですが、現実問題としてまっすぐ進めないのですからお話になりません。いつの間にか目的は「オスカー・ワイルドの墓を見ること」から、「どこでもいいから出口にたどり着くこと」へとすり替わっています。
まあ、結論をいうと、40分ほどうろついた挙句に自動車の排気音が聞こえ始め、ようやく門の一つにたどりつくことができたのです。門の外では「ペール・ラシェーズ墓地の地図」が山のように売られていましたが、出る時にみつけてもねぇ……。
さて、気を取り直して散歩を続けます。カバンから『PARIS PRATIQUE 』を取り出し現在位置だけ確認します。自分がメニルモンタン大通りにいると知ってようやく安心し、そのまま北上することにしました。メトロの「ペール・ラシェーズ駅」をこえた辺りから急に景色が綺麗になります。私は通りの右傍を歩いていたのですが、歩行者用の道幅も広く、街路樹が植えられ、点々とカフェが続きます。しかも、フランス的なカフェではなく、マグレブ系のアフリカ情緒たっぷりな洒落たカフェばかりなのです。例えば、テラスのテーブルには小さくてカラフルなタイルがはめ込まれていたり、ソファ風の椅子が並んでいたり。墓場で無駄に時間を過ごしたせいで昼食を取りそこなっていた私は、ここでお昼ご飯を食べることにしました。となると、少しでもいい店に入りたいと思うのが人情。10件ほどチェックして、一番にぎわっていた「La Mere Lachaise(ラ・メール・ラシェ―ズ) 」に入ってみることにしました。
かろうじて空席をみつけテラス席に座ってみると、なるほど、混んでいる理由がわかります。街路樹の緑、夏の陽射し、乾いた風など、まさに「夏を満喫」できる空間なのです。パスタを注文し、パリにいる幸せをかみしめながら、今度は客層のチェックです。そう、日曜の午後といえば、デートタイム。まわり中カップルだらけだったのです。さもなければ、私のように日曜日を持て余した旅行客のグループ。この「グループ」というところに注目です。よーく見てみると、一人ぼっちで店に入っているのは、なんと私だけという有様。右を見ても左を見ても前も後ろもとにかく二人以上で来ている客ばかり。皆食事をしながら楽しそうに会話しているのですから、なんだか寂しい気持ちになってしまいます。
しかもこの混みようでは、パスタが来るまで結構時間がかかりそうです。周りのお客さんを眺めている訳にも行かないので、とりあえずカバンに入れてきた本を取り出して読むことにしました。しかし、取り出してみると、それはフロイトの『精神分析入門(上)』
……。がーん。なんで、こんな気の滅入る本を持ってきてしまったんだ……と自分を呪うも後の祭り。一気に寂しさのボルテージが上がる中、「フランス語学校の夏期講座では友達を作りまくるぞ!」と夏の風に誓うのでした。